フラメンコ談義・12
** 言葉はなんとかなります ! ? **
お正月(1979年)も過ぎたある日曜日の朝、ペンションの廊下で騒いでいる子供達の声で起こされました。まだ朝の11時前だというのに、サッカーをして遊んでいるのです。ペンションのおばちゃんや、この子ども達の親はなぜ怒らないのかな? と思いながら我慢していましたが、私の部屋のドアにボールが当たり、おもわずドアを開けて怒ったのです。『こら~!』(と日本語で。)すると、がき達が『オラ~!』(英語の「ハロー」の意味)と、元気よく笑って答えたのです。・・・・(えっ?)と一瞬おかしいなと思ったのですが、『オラ~!』と答えてドアを閉めました。・・・・???・・・
しかし、やっぱり腹が立って、 「まだ、寝てる人もいるのに、騒ぐんじゃない! それも廊下でサッカーをするなんて、とんでもない!」・・・と、ドアを開けて怒ってやろうと思い、再びドアを開けたのですが、・・・スペイン語でどう言うのかわからず、・・・がきの横を通って、トイレに行きました。・・・?
トイレから出ると急に雨が降ってきました。マドリッドの冬は霧や雨の日が多いのです。 窓から見える中庭の洗濯物が気になったので、『セニョーラ!、セニョーラ~?』(おばちゃ~ん!)と呼んだら、コシーナ(台所)から出てきました。
『エスタ ジョビエンド !(雨が降っているよ)、サバナ、サバナ(シーツ、シーツ)』というと、・・・・・『あれは、・・・私の ・・ブラガ だよ!』・・・『ブラガ ?』と私が言うと、肝っ玉おばちゃん(100キロは越えていました)は顔を少し赤くし、笑いながら何か言ったのですが、わかりませんでした。しかし、おばちゃんのジェスチャーで、シーツだと思ったのは、おばちゃんの大きな「パンツ」だったのがわかり、おもわず笑ったのですが、おばちゃんにわるくてすぐに部屋に戻りました。
この時もそうですが、スペイン人は雨が降ってきても洗濯物を取り入れないのが不思議です。・・「そのうち晴れるから」・・・それはそうなんだけど。
今でも気になり、つい注意したくなります。スペイン人と同じようには思えません。
翌日、冬のバーゲンをデパート(エル・コルテイングレスというスーパー)でやっていると聞き、レコードを買いに行きました。何が良いのかわからないので、フラメンコの、聞いたことのあるアーティストのレコードをはじめ、わからないものも片っ端から買い集めました。(ずいぶん後のことですが、良いレコードとは、なかなか出会えないことがわかりました。)
ある日、レコードを買った後、雨で乾かない下着を買おうと思い、デパートの店員さんに売り場を聞いたのです、(え~と、パンツのスペイン語は、そうそう「ブラガ」・・・ペンションのおばちゃんのパンツを思い出しながら・・)
『ブラガはどこで売っていますか?』・・・・聞いたところに行くと、(なんと派手なパンツやな~)とおもい、(えっ!?)・・・そこは、赤や黒、黄色にピンクの女性の下着のコーナーでした。・・(スペイン人はいいかげんなことを言うな~、冗談きついな~、ここは女もんやないか!)、と思いながら、もう一度、側の店員さんに聞いたのです。『ブラガはどこに?』・・・『ここですよ、?』と言いながら、その店員さんは変な顔をして『誰のための?』と聞いてきたのです。 私は『自分のだ』と答えたら、店員さんは一瞬、驚いた顔をして、私を上から下まで見てから、ちょっと笑いながら、『カルソンシージョ は、一つ上の階のカバジェーロ(紳士)、もう一つ上の階よ!』といったのです、「カルソンシージョ」が何なのかわかりませんでしたが、とにかく、上の階に行きました。・・・やっと男性用のパンツ(カルソンシージョ)が買えました。(スペイン語の「パンツ」は女と男のものとは単語が違うのです。)
・・・「パンティーはどこで売ってますか?」と私に聞かれ、「自分用だ」と言った私を、一瞬、上から下まで見たあの店員さんは、「オカマ」とは思わなかったんだ、と、あの時、安心したものの、とても恥ずかしかったのを覚えています。
このように言葉は失敗をつみかさね覚えていくもんだと思います。
しかし、文法が間違っていようが、難しい言葉がわからなくとも、意思や気持ちがうまく伝わればいいんだと思って、勉強しなくなるのはいけません。
『アルボンディガはおもしろいが、未だに、まともなスペイン語がしゃべれないな~』・・・・と言われますから皆さん気をつけて下さい。
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